アルコール系手指消毒剤と2種類のアルコール系手指消毒ゲル剤の抗菌作用およびルーチンの患者ケア中における使用受容性の比較

2007.06.30

Comparison of the antibacterial efficacy and acceptability of an alcohol-based hand rinse with two alcohol-based hand gels during routine patient care


Frederic Barbut*, Eric Maury, Laurianne Goldwirt, Pierre-Yves Boelle, Denis Neyme, Rubina Aman, Beatrice Rossi, Georges Offenstadt
*Unite d’Hygiene et de Lutte contre les Infections Nosocomiales, France
Journal of Hospital Infection (2007) 66, 167-173
本研究の目的は、アルコール系手指消毒リンス剤(AHRR)と2種類のアルコール系手指消毒ゲル剤(AHRG)の抗菌作用について、実際の使用条件下での手指汚染の減少を用いて比較することである。この3製品の使用受容性を評価し、全体的な手指消毒遵守に対する各製品の効果を調査することを意図した。前向きの交差時系列臨床試験を内科集中治療室で実施した。本研究は3つの6週間の期間(P1、P2、P3)に分かれている。擦式法は、P1中はSterilliumTM洗浄剤(AHRR)、P2中はSterillium gelTM(AHRG-1)、およびP3中はManugel PlusTM(AHRG-2)で実施した。擦式法の前後の手指汚染を、患者との直接接触直後にグローブジュース法を用いて評価した。医療従事者は、無記名アンケートにより本製品の受容性を評価した。医療従事者の手指消毒の遵守を3つの期間中に評価した。242回の擦式法の実施機会を研究対象とした。AHRR、AHRG-1、およびAHRG-2による平均微生物減少係数(単位はlog10 CFU/mL)は、それぞれ1.28±0.95、1.29±0.84、および0.51±0.73であった(p<0.001)。医療従事者による3つの製品のアンケートから、AHRRとAHRG-1は、AHRG-2よりも有意に受容性が高いことが示された。医療従事者の手指消毒の全体的な遵守は、ゲルが使用できるときは良好であった。全製品が欧州規格EN1500に合格しているものの、実際の使用条件下ではAHRG-1とAHRRはAHRG-2よりも有効であった。擦式法製品の抗菌作用の比較にはin vivo試験が重要である。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
擦式アルコール性手指消毒剤は、同じアルコール製品同士でも違いがあることを示した論文である。本稿では微生物の減少係数に有意差があったことを示しているが、これについての原因は全くディスカッションしていない。それよりも(やや強引に)、ユーザーの使用感が受け入れに大きく関与しており、実際の臨床の現場では、「製品の性能のわずかな違いを云々するより、とにかく使ってくれなければ意味をなさない」というメッセージを発信したかったようである。
監訳者注:
交差時系列臨床試験(alternating time-series clinical trial):2つ以上の実験的介入を指定された順序で同じ患者群に交互に施す研究デザインのこと。交差研究(crossover study)ともいう。

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