成人救急入院患者のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の保菌率と危険因子―すべての患者にスクリーニングを実施すべきか★

2007.05.30

Prevalence and risk factors for meticillin-resistant Staphylococcus aureus in adult emergency admissions 窶・a case for screening all patients?


G. Gopal Rao*, P. Michalczyk, N. Nayeem, G. Walker, L. Wigmore
*University Hospital Lewisham, UK
Journal of Hospital Infection (2007) 66, 15-21
この研究では1年間のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)スクリーニングプログラムの期間における緊急入院時のMRSA保菌率および危険因子の頻度について述べる。全体で成人緊急入院13,826件の中で患者6,469例による7,801件の入院(56.4%)に対してMRSAのスクリーニングを実施した。スクリーニング対象の中では入院7,801件の中の患者433例(6.7%)による670件(8.6%)にMRSA保菌が認められた。調査された危険因子は、先行する入院歴、先行するMRSA保菌、およびケアホームへの入居であった。いずれかの危険因子がある患者(MRSA陽性:3,952例中366例[9.3%]対MRSA陰性:2,450例中67例[2.7%]、P<0.001)、高い年齢(MRSA陽性患者の平均年齢74.4歳に対して陰性患者56.2歳[P<0.001])、高い入院頻度(P<0.001)、ケアホームからの入院(184例中41例、22.2%)、先行するMRSA保菌(1,855例中232例、12.5%)においてはMRSA保菌率が有意に高かった。スクリーニングプログラムの費用はおよそ24,500ポンドであった。研究期間中に病院感染MRSAおよびMRSA菌血症は著しく減少したことが明らかになった。この研究ではこれらの減少とスクリーニングプログラムとの因果関係を確かめるためにデザインされたものではなかった。結論として、緊急入院でMRSA保菌率が高く、特に危険因子のある患者で高い。選択的な危険因子を用いたスクリーニング戦略を用いた場合、60%以上の患者のスクリーニングが必要であるが、3,952例の入院6,469件の中で67例(15.5%)のMRSA保菌者が見過ごされることになる。MRSA保菌者を検出するために、すべての緊急入院でスクリーニングは選択的スクリーニングよりも好ましく、比較的安価であり、緊急入院における病院感染MRSAによるMRSA保菌率およびMRSA菌血症を減少させる可能性がある。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
緊急入院を対象にMRSA スクリーニングを実施することによりコントロールを図ろうとする研究である。長期療養施設からの入所がMRSA保菌の危険因子であったとされている点が注目される。この論文ではMRSAスクリーニングの費用対効果まで解明されていないが、リスクの高い状況における選択的なスクリーニングがさらに検討されるべきであろう。

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