英国の大学病院における黄色ブドウ球菌菌血症の疫学的、臨床的、および検査上の特徴

2007.02.28

Epidemiology, clinical and laboratory characteristics of Staphylococcus aureus bacteraemia in a university hospital in UK


I. Das*, N. O’Connell, P. Lambert
*University Hospital of Birmingham NHS Foundation Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2007) 65, 117-123
英国では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)菌血症およびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)菌血症の症例数が持続的に増加している。この前向き研究は、2001年11月1日から2002年12月31日の14カ月間にわたり、患者139例の147件の黄色ブドウ球菌菌血症を対象とした。患者84例の87件(59%)はMRSA、患者56例の60件(41%)はMSSAによるものであった。菌血症の感染巣として最も多く確認されたのはMRSA群では血管内挿入器具(29件、33%)、MSSA群では軟部組織(15件、25%)であった。MRSA菌血症が原因の死亡率はMSSAのものよりも高かったが(33%対16%、P=0.03)、年齢、呼吸器感染病巣の有無、および不適切な抗菌薬による治療で補正すると、両群間にそれぞれの黄色ブドウ球菌による菌血症が原因となった死亡率(P=0.35)と粗死亡率(P=0.39)に統計学的な差はなかった。呼吸器感染病巣(P=0.02)と不適切な抗菌薬による治療(P=0.02)は、MRSA菌血症が原因の死亡率と関連があったが、MSSA群では高齢が唯一の危険因子(P=0.02)であった。今回の研究では、黄色ブドウ球菌菌血症が依然として、主に高齢者の重篤な感染症であることが示されるとともに、この疾患の制御と管理における戦略の改善が必要であることを強調している。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
MRSA菌血症とMSSA菌血症の比較を行った研究であるが、両者ともに黄色ブドウ球菌であり、唯一の違いは抗菌薬の感受性である。しかし、すべての黄色ブドウ球菌をMRSAとみなして抗MRSA薬を使用するのも望ましくない。結局、いかに早く両者を見分け、適切な抗菌薬による治療へ持ち込むかが大切であり、そのことを再確認した形の研究である。

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