ステンレス製手術器具のプリオン感染組織による汚染濃度に対する乾燥時間、環境温度、および予浸の効果:手術室から中央滅菌サービス部門への器具運搬時間の延長に関する懸念★
Effect of drying time, ambient temperature and pre-soaks on prion-infected tissue contamination levels on surgical stainless steel: concerns over prolonged transportation of instruments from theatre to central sterile service departments
I.P. Lipscomb*, H. Pinchin, R. Collin, C.W. Keevil
*University of Southampton, UK
Journal of Hospital Infection (2007) 65, 72-77
手術器具を介したプリオンの医原性伝播が、実験的にも臨床的にも示されている。さらに、虫垂や筋などの末梢組織にプリオン蛋白質が蓄積することが最近発見されたこと、および血液媒介ヒト‐ヒト伝播を示唆するエビデンスから、滅菌部門での処理後であってもプリオン蛋白質を含有する残留汚染物質が感染性を残している可能性が懸念されている。手術器具から蛋白様物質をすべて除去することが、効果的な滅菌のために極めて重要である。汚染物質が器具表面で一定時間に乾燥すると、その除去が著しく妨げられることがある。中央滅菌サービスセンターの使用という最近の傾向や、それに伴う手術室から再洗浄までの運搬時間の延長により、滅菌前の器具に付着する残留汚染物質量を最小限に抑えることが必要になっている。今回の調査では、手術室での手術器具使用から、洗浄器や消毒器による初回予洗までの時間をシミュレートした。その目的は、異なる温度で乾燥したことによる変化の動態および各種の市販の予浸液の使用について、器具それ自体のレベルで調査することであった。結果から、あらゆる予浸により、プリオン感染組織による汚染が有意に減少する(最大96%)こと、および手術室から洗浄施設へ運搬中の温度管理により、高濃度の蛋白質が固着するまでの時間を延長できる可能性があることが示された。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
プリオンの不活化は大変に困難であり、室温で1 N NaOHに1時間の浸漬、あるいは日常作業よりもずっと厳しい条件での高圧蒸気滅菌など、ルーチン業務とするのは現実的に不可能である。蛋白質性の汚染物質が固着するのを避け、十分な洗浄で対応するのが現実的である。なお、この論文では触れられていないが、手術に使用された鋼製小物については、どの器具がどの手術で使用されたのか記録を整えて追跡可能性(traceability)を確保する対策も検討されている。
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