基質拡張型β-ラクタマーゼ産生大腸菌およびKlebsiella属菌による感染症の疫学:ロンドンの第三次病院におけるコホート内症例対照研究★
Epidemiology of infections caused by extended-spectrum β-lactamase-producing Escherichia coli and Klebsiella spp.: a nested case窶田ontrol study from a tertiary hospital in London
I. Skippen*, M. Shemko, J. Turton, M.E. Kaufmann, C. Palmer, N. Shetty
*HPA Collaborating Centre at University College London Hospitals NHS Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2006) 64, 115-123
基質拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌による感染症の危険因子(リスクファクター)や、侵襲性感染症患者の転帰に関する情報は乏しい。本研究の目的は、ESBL産生菌による感染症の危険因子および全感染症関連死亡率を、コホート内症例対照研究のデザインを用いて評価するとともに、分子疫学的方法と従来の疫学的方法によって院内での伝播を実証することである。2003年12月から2005年4月にかけて、ESBL産生大腸菌またはESBL産生Klebsiella属菌による血流感染症患者50例を登録した。単純無作為抽出により、同じ期間にESBL非産生血流感染症患者から対照(50例)を選択し、潜在的な交絡因子を検討した。症例患者と対照患者を2005年11月まで追跡調査し、退院または死亡の転帰を記録した。分子疫学的方法に加えて、補助的に従来の疫学的方法を併用し、菌の伝播の調査を行った。ロジスティック回帰分析により、β-ラクタム系抗生物質の投与歴[オッズ比(OR)11.57、95%信頼区間(CI)2.31~51.15、P=0.003]、15日を越える入院(OR 2.63、95%CI 1.01~6.89、P=0.04)、集中治療室への入院歴(OR 13.98、95%CI 1.88~19.15、P=0.006)がESBL産生菌感染症の独立した危険因子であることが示された。追跡調査開始後15日間はESBL産生菌感染症患者のほうが死亡率が有意に高かったが、追跡期間の最終時点では症例患者と対照患者の死亡率に差はなかった。分子疫学的方法により、ESBL産生分離株に5種類のクラスターが確認された。従来の疫学的分析により、これらのクラスターのうち3つで伝播のエビデンスが示された。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ESBL産生菌によるアウトブレイクは、本邦でも年々増加している。原因究明のための手段として、参考になる文献である。
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Journal of Hospital Infection (2020) 105, 35-42
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