効果の高いバイオフィルム除去剤の使用:内視鏡の再処理手順の改善に不可欠な方法★

2006.10.31

Using an efficient biofilm detaching agent: an essential step for the improvement of endoscope reprocessing protocols


K. Marion*, J. Freney, G. James, E. Bergeron, F.N.R. Renaud, J.W. Costerton
*Faculte de Pharmacie, France
Journal of Hospital Infection (2006) 64, 136-142
有効性が立証されている内視鏡再洗浄方法を実施しても、内視鏡のチャンネルの内側にバイオフィルムが形成される。消毒前にチャンネルを徹底的に洗浄しないと、効果的な殺菌剤を使用しても不十分である。今回の研究では、剥離促進剤を含有する新しい抗バイオフィルム配合剤と、現在使用されている洗浄剤を比較した。テフロンチューブと、内視鏡検査中の一般的な状態を再現する汚染作製器を使用して検査を行った。製剤を静的洗浄+ブラッシング洗浄、または動的洗浄※※のいずれかに使用し、あらかじめ形成しておいたバイオフィルムを除去する能力を評価した。処理後の残存バイオフィルムを評価し、非処理の対照群と比較した。バイオフィルムに覆われた表面の比率は、クリスタルバイオレットで染色して測定した。チューブ表面からこすり取った細菌を寒天平板培養し、コロニー形成単位(CFU)の計数により、生菌数を調べた。追加の検査として、人工的に汚染した実物の内視鏡でも実施した。走査型電子顕微鏡により、バイオフィルムの除去を確認した。本研究により、この新しい抗バイオフィルム製剤はバイオフィルムの形成を阻止し、時間が経過したバイオフィルム(約108 CFU/cm2)を除去することが示された。その一方、第4級アンモニウム化合物を含有する洗浄消毒剤による方法では、これらの手順と製剤がバイオフィルムを内視鏡表面に固定させるため、効果が低いことが示された。この新しい方法および製剤は、バイオフィルム制御への新しいアプローチを示すものであり、内視鏡洗浄効果を改善し、感染伝播リスクを減少させると考えられる。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
バイオフィルムは、細菌由来の多糖体がスライム状になり、細菌自体をすっぽり覆ったまま固まって形成される。よって、バイオフィルムに閉じ込められた細菌は、消毒剤で処理をしても薬剤がバイオフィルム内の病原菌に十分な濃度で到達しないので、時間が経つと再び増殖を始めて不完全な除菌の原因となる。バイオフィルムが形成されると非常に除去しにくいので、内視鏡使用後は直ちに水に浸漬し、蛋白質が乾かないうちに速やかに徹底洗浄し、その後消毒薬による機械洗浄をするように留意されたい。
監訳者注:
静的洗浄:浸漬のみによる洗浄。
※※動的洗浄:機械洗浄。

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*University of Birmingham, UK

Journal of Hospital Infection (2023) 136, 38-44


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