心臓手術患者における心筋保護用氷片由来のEnterobacter cloacaeによる創感染症のアウトブレイク★★

2006.10.31

An outbreak of wound infection in cardiac surgery patients caused by Enterobacter cloacae arising from cardioplegia ice


A.S. Breathnach*, P.A. Riley, S. Shad, S.M. Jownally, R. Law, P.C. Chin, M.E. Kaufmann, E.J. Smith
*St George’s Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2006) 64, 124-128
本論文では、術後の胸骨創感染症の集団発生について述べる。ある心臓外科医が担当する患者に、手術創離開を伴う重度の感染症が集団発生したが、同僚の他の外科医では感染率の上昇はなかった。感染症は主にEnterobacter cloacaeによるものであり、分子タイピングと血清型別ではこれらの分離株は区別できなかった。外科医の手技を観察した結果、不適切な点はないことが判明し、また別の病院でこの外科医に手術を受けた患者に感染はなかった。手術の方法は他の外科医と重大な相違はないように思われた。環境からの感染源を除外するため、尿検体用の選択鑑別培地(CHROMagar Orientation)で培養した試料により、手術室のスクリーニングを行った。さらに検討したところ、他の外科医の手技と異なる点が1つあることが明らかとなった。すなわち、この外科医は心筋保護のために半凍結状のHartmann液を使用していた。凍結に使用した製氷機をスワブ採取したところ、臨床分離株と区別が不可能なE. cloacaeが検出された。本菌が製氷機を汚染し、汚染が氷/半凍結状の溶液に伝播した結果、患者に感染したとの仮説が立てられた。製氷機を交換し、厳格な洗浄計画を定め、さらなる汚染の可能性を減少させる処置を取って以来、症例は発生していない。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
製氷機や冷凍庫は、電源を止めて常温に戻してから清掃する必要があり、また常に低温に保たれているため、一度雑菌が混入すると殺菌されないで残り、ESBLやメタロβ-タクタマーゼ産生菌、あるいはアスペルギルスなどのアウトブレイクの温床となりやすい。しばしば誤解されていることであるが、冷蔵庫に生物を入れると腐りにくいのでつい微生物の存在を忘れてしまうが、低温そのものは細菌を殺す作用がなく、単に細菌の生物活性を下げて腐りにくくしているだけであることをもう一度再認識していただきたい。このような観点から、氷枕などで使用する製氷機で作った氷を食用として患者に与えている病院があれば、すぐにやめていただきたい。また期せずして、氷冷したHartmann液も特に何の利点もないことがこの研究で実証されていることに注意していただきたい。

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