血管外科病棟におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の発生率減少を目的とした介入の一部としての一時的コホート隔離病棟の利用 ★

2006.08.31

Use of a temporary cohort ward as part of an intervention to reduce the incidence of meticillin-resistant Staphylococcus aureus in a vascular surgery ward


E.T. Curran*, K. Hamilton, A. Monaghan, M. McGinlay, B. Thakker
*North Glasgow University Hospitals Dvision, UK
Journal of Hospital Infection (2006) 63, 374-379
本稿では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の新規感染の持続的な増加により、標準的なMRSA感染制御予防策の実施が不適となった血管外科病棟に対する、コホート隔離エリア導入の効果について論じる。発表された論文についての最近の総説は、「英国で推奨されている隔離策が有効であることを示すエビデンスはほとんど見いだせない」と結論している。隔離に関するエビデンスをよりシステマティックに収集するために、著者らはある報告フォーマットを推奨しており、本論文は推奨される報告フォーマットに従っている。調査施設は、英国のグラスゴーにある第三次病院内の、30床の急性・亜急性血管外科病棟であった。データの解析は、時系列をコホート隔離前19カ月、隔離中の8カ月、隔離後8カ月で区切って行った。コホート隔離エリアの開設後、患者から採取される院内感染MRSA分離株数は有意に減少した(P=0.0005)。この減少は、コホート隔離エリアの使用を終了した後も持続した。結論として、コホート隔離エリアを利用して、MRSAの保菌・感染のない患者から保菌・感染患者を効果的に隔離した結果、MRSAの交差保菌および交差感染が有意に減少した。結果として生じた病棟内のMRSA感染の減少により、コホート隔離エリアの使用終了後も、その後の患者の効果的なスクリーニングと隔離が容易になった。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
限定されたMRSAのハイリスクエリアで、比較的エンデミックな状態にある血管外科病棟におけるコホート隔離の有用性について検討している。本来接触感染であるMRSAでは、空気感染で必要な個室隔離は必ずしも必要性が高くはない(ないわけではない)が、これは物理的バリアより精神的バリアの意味合いが強い。十分な個室を準備できない状況では、コホート隔離を行いMRSAの伝播リスクを積極的にコントロールすることが有用であることを示している。

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