南アフリカの小児病院における医療関連感染による負荷、感染症の種類、影響

2016.12.21

Burden, spectrum, and impact of healthcare-associated infection at a South African children’s hospital


A. Dramowski*, A. Whitelaw, M.F. Cotton
*Stellenbosch University, South Africa
Journal of Hospital Infection (2016) 94, 364-372
背景
アフリカ諸国の大半において、小児科医療関連感染(HCAI)およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の罹患率および影響は明らかでない。
目的
南アフリカの紹介病院において、小児科 HCAI の負担、感染症の種類、リスク因子、影響を前向き臨床サーベイランスにより検討すること。
方法
2014 年および 2015 年の 5 月 1 日から 10 月 31 日に、南アフリカの Tygerberg Children’s Hospital において、米国疾病対策センター(CDC)・全米医療安全ネットワーク(NHSN)の定義を用いて、前向き臨床的および検査室データにもとづくHCAI連続サーベイランスを実施した。HCAI および関連死亡のリスク因子を多変量ロジスティック回帰で分析したところ、交絡因子および時間をマッチさせる方法を用いて入院期間の超過が推定された。
結果
HCAIの発生率は 1,000患者・日あたり 31.1(95%信頼区間[CI] 28.2 ~ 34.2)で、主なものは、病院感染肺炎(185/417、4%)、尿路感染(UTI)(45/417、11%)、血流感染(BSI)(41/417、10%)、および手術部位感染(21/417、5%)であった。小児集中治療室(PICU)におけるデバイス関連 HCAI 発生率は高く、人工呼吸器関連肺炎、中心ライン関連 BSI、カテーテル関連 UTI について 1,000 デバイス・日あたりそれぞれ 15.9、12.9 および 16 であった。HCAIは、PICU 在室(オッズ比 2.0)、栄養不良(1.6)、HIV 感染(1.7)、HIV 曝露(1.6)、McCabe スコア「致死的」(2.0)、共存症(1.6)、留置器具(1.9)、輸血(2.5)、および転院(1.4)と有意に関連していた。小児科死亡の 3 分の 2 が HCAI 関連のもので、HCAI の発症から中央値で 4 日に発生しており、HCAI 関連入院の粗死亡率は、非関連入院と比較して有意に高かった(24/325[7.4%]対12/1,022[1.2%]、P < 0.001)。HCAI は、371,887 米ドルの直接的費用と、入院 2,275 日、抗菌薬投与 2,365 日、臨床検査 3,575 件の追加をもたらすことになった。
結論
HCAI は、しばしば発生し、高い罹患率および死亡率、高額の医療費を伴う。アフリカの小児に対する HCAI サーベイランスおよび予防プログラムの確立は、公衆衛生上の優先事項である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
アフリカにおけるほとんどの国において、HCAI に関するデータはない。南アフリカ共和国は、比較的医療資源があり、感染症検査や感染制御の人員についても整備されているが、HCAI のデータは同様にない。30 年前(1987)に小児に関する全病院サーベイランスが実施されて以後実施されていない状況である。本論文では、南アフリカ共和国での小児医療における HCAI を知る上で重要であり、一方でサーベイランス結果は、発生率が高収入国の 3 ~ 6 倍高く、早急な感染対策の実施が必要な状況であることがわかる。

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