サーベイランス担当者による医療関連感染症の診断の正確度に関する症例報告を用いた評価★

2015.08.31

Case vignettes to evaluate the accuracy of identifying healthcare-associated infections by surveillance persons


C. Schröder*, M. Behnke, P. Gastmeier, F. Schwab, C. Geffers
*Institute of Hygiene and Environmental Medicine, Charité Berlin, Germany
Journal of Hospital Infection (2015) 90, 322-326
背景
全国的なサーベイランスシステムでは、感染症の正確かつ再現可能な診断が重要である。
目的
医療関連感染症(HCAI)の診断の正確度が、全国的な医療関連サーベイランスシステムの HCAI 発生率に及ぼす影響を調査すること。
方法
ドイツの Krankenhaus Infektions Surveillance System(KISS;院内感染症サーベイランスシステム)の集中治療室(ICU)サーベイランスに関する検証プロセスから得たデータを用いて、ICU における HCAI サーベイランスでの個々のサーベイランス担当者の HCAI 診断の正確度を算出した。多変量解析により、サーベイランスの正確度に関連する因子を特定した。
結果
ICU 218 施設のサーベイランス担当者合計 189 名が、30 件の症例報告を評価した。正確度が高いサーベイランス担当者グループに属する割合が高かったのは、医師(オッズ比[OR]3.14、P = 0.02)および外部のサーベイランス担当者(OR 4.69、P ≦ 0.01)であった。ICU の HCAI 発生率は、ICU のサーベイランス担当者の診断感度(発生率比[IRR]1.28、95%信頼区間[CI]1.07 ~ 1.53、P ≦ 0.01)との関連がみられた。感度が高い場合は、医療関連尿路感染症発生率(IRR 1.33、95%CI 1.02 ~ 1.75、P = 0.03)および血流感染症発生率(IRR 1.33、95%CI 1.06 ~ 1.68、P = 0.01)が高かった。特異度が高いことは有意な因子ではなかった。
結論
症例報告を用いた HCAI 診断の感度と ICU における HCAI 発生率との関連から、この検証方法は他のサーベイランスシステムの検証にも推奨できる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
時間的(施設内)および空間的(複数施設)に比較し、その違いあるいは変化をみて、感染症発生および感染予防対策の状況を評価するためのツールがサーベイランスである。比較のためには「一定の判定基準」が必要である。本論文では、医師が担当者として関与するとサーベイランスの感度が高くなること、また感度が高いと尿路感染と血流感染の発生率も高くなるという結果であり、標準化された定義を使用していても「正確な感染症の診断」がいかに重要であるかを指摘している。日本においてはサーベイランスの実施が必須となり広く実施されるようになったが、本論文にあるような「質保証」をいかに担保するかが今後の課題である。

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