アジア人患者において層流は初回人工膝関節全置換術後の人工関節感染症リスクに影響しない Laminar flow does not affect risk of prosthetic joint infection after primary total knee replacement in Asian patients
B.J.X. Teo*, Y.L. Woo, J.K.S. Phua, H-C. Chong, W. Yeo, A.H.C. Tan
*Singapore General Hospital, Singapore
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 305-308
背景
層流(LAF)の役割は、リスク低下を再現できない複数の研究と矛盾している。2016 年の世界保健機関のガイドラインでは、優れた比較試験のこうした不足が明らかになった。
目的
人工膝関節全置換術を受けるアジア人患者において、LAF の使用および人工関節感染症(PJI)の発生率を分析すること。
方法
前向きに収集された単一の外科医のデータベースにて、2004 年から 2014 年に標準的なセメント使用後方安定型人工膝関節全置換術を受けた患者に関してレビューを行った。再置換、外傷性の症例および/または炎症性の症例は除外した。使用された気流の種類を特定した。すべての手術の術式および手術手順は同様であった。止血帯および挿入ドレーンはルーチンに使用されていた。膝蓋骨置換は行わなかった。患者は 2 年まで定期的に外来診療所で経過観察を受けた。患者は各来院時に PJI の発生の有無の評価を受けた。
結果
1,028 件の手術のうち、453 件(44.1%)は LAF が装備された手術室で実施されたのに対し、575 件(55.9%)は LAF が装備されていない手術室で実施された。年齢、性別、または手術側という点では、2 群間に有意差は認められなかった。PJI の全発生率は 0.6%(N = 6)であった。3 件(50%)はLAF が装備された手術室で発生したのに対し、3 件(50%)は LAF が装備されていない手術室で発生した。これは統計的に有意ではなかった。
結論
LAF システムは調達と維持にコストがかかる。人工膝関節全置換術後のアジア人患者において、最新の無菌操作、患者の最適化および予防的抗菌薬の使用を伴う状況で、LAF は PJI のリスクをさらに減らすようには思われない。
サマリーの原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
1 名の外科医が約 10 年間に行った1,028例の PJI の手術例を対象にした後向きの症例対照研究である。研究期間前半が通常換気群で後半が LAF 群かと思ったが、そうではないようである。SSI 予防の研究全般に言えることだが、そもそも SSI の発生率が 0.6%と低い中で、1 つの介入効果を統計学的に示すのはなかなか難しい。本論文で LAF の有効性が否定されたとはいえないだろう。
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