成人における黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による髄膜炎:メチシリン耐性株およびメチシリン感受性株による感染症の比較コホート研究★

2019.05.10

Staphylococcus aureus meningitis in adults: A comparative cohort study of infections caused by meticillin-resistant and meticillin-susceptible strains


V. Pintado*, R. Pazos, M.E. Jiménez-Mejías, A. Rodríguez-Guardado, B. Díaz-Pollán, C. Cabellos, J.M. García-Lechuz, J. Lora-Tamayo, P. Domingo, E. Muñez, D. Domingo, F. González-Romo, J.A. Lepe- Jiménez, C. Rodríguez-Lucas, A. Gil, I. Pelegrín, F. Chaves, V. Pomar, A. Ramos, T. Alarcón, E. Pérez-Cecilia
*Hospital Ramón y Cajal, Spain
Journal of Hospital Infection (2019) 102, 108-115
背景
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による髄膜炎はまれな院内感染症で、通常は脳神経外科手術に起因するが、特発的に発生する例が時にみられる。
目的
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびメチシリン感受性ブドウ球菌(MSSA)による髄膜炎の特徴を比較すること、ならびに MRSA 感染症および抗菌薬の併用療法を含めた死亡の予後予測因子を調べること。
方法
スペインの11 施設の病院に入院した黄色ブドウ球菌による髄膜炎の成人 350 例(1981 から 2015 年)を対象とした後向きコホート研究。ロジスティック回帰および傾向スコアマッチングを用いて、予後予測因子について解析を行った。
結果
MRSA 髄膜炎は 118 例(34%)、MSSA 髄膜炎は 232例(66%)であった。術後感染症(91% 対 73%)および院内獲得(93% 対 74%)は、MRSA 髄膜炎の方が MSSA髄膜炎より有意に頻度が高かった(P < 0.001)。併用療法を受けていた患者は 118 例(34%)であった。30 日全死亡率は 23%であった。多変量解析では、死亡は重度敗血症または敗血症性ショック(オッズ比[OR]9.9、95%信頼区間[CI]4.5 ~ 22.0、P < 0.001)、特発性髄膜炎(OR 4.2、95%CI 1.9 ~ 9.1、P < 0.001)、McCabe-Jackson スコアで急速または最終的に致死的(OR 2.8、95%CI 1.4 ~ 5.4、P = 0.002)、MRSA髄膜炎(OR 2.6、95%CI 1.3 ~ 5.3、P = 0.006)、および昏睡(OR 2.6、95%CI 1.1 ~ 6.1、P < 0.029)と関連していた。術後感染症例では、死亡は脳脊髄デバイス留置(OR 7.9、95%CI 3.1 ~ 20.3、P < 0.001)と関連していた。
結論
MRSA 髄膜炎と MSSA 髄膜炎の臨床的および疫学的な差異は、術後感染症および特発性髄膜炎という発症機序の違いによって説明される可能性がある。髄膜炎および基礎疾患の重症度に加えて、MRSA 髄膜炎では死亡率の上昇が認められた。抗菌薬の併用による生存率の上昇は認められなかった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
MRSA 髄膜炎と MSSA 髄膜炎が、手術との関連等、発症機序と臨床背景に関する点で違いがあるのは予想されていたが、今回複数の医療機関による、長期的かつ大規模な検討で、それを詳しく明らかにすることができた。一読をお勧めする。

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